船舶料理士

船上のコックさん

船舶料理士とは、海上を航行する船舶内において活動する船員のための食事を調理して提供する役割を担う資格をもつ人のことを指します。
船舶料理士は単なる調理師と異なり料理の腕だけでなく、長期にわたる航海において船員の健康を司る食事を担当する役割や積荷として限られた食材の中で食材を管理し、過不足なく料理を作る使命があります。

仕入れをしようと思えば、いつでも新鮮な食材が手に入る陸上とは状況が全く異なり、停泊した港で積みこんだ食材で次の港まで食材が底をつくことのないよう使うとともに、栄養バランスの整えた食事を提供しなくてはなりません。

また航行中に嵐など不測の災害に見舞われれば、航海日数が伸びることもありますし、遭難等により無人島などに漂着した場合に、残された食材でいかに船員の命を繋ぐことができるかといった臨機応変の柔軟な対応力も求められます。

必要なスキル・能力

このように重責を担う一方で、料理の味や見た目も重要となり、料理人としての力量も重要になります。
というのも長い航海の間、船の中の限られた空間で24時間緊張状態で働く船員にとって、食事は大切なエネルギー源であるだけでなく、心の癒しやストレスの解消にもなるものだからです。
このため、船舶料理士になるには、料理人としての腕だけでなく、船舶に乗り込んで厨房部にて調理に従事した経験が要求されます。

資格を取得するには

船舶料理士試験に合格するか、海員学校の司ちゅう・事務科を卒業するか、調理師・栄養士等の能力を有する者でかつ船内調理経験が3ヶ月あることが必要です。
これまでは船内調理経験は半年から1年が必要でしたが、平成23年度より一律3ヶ月に短縮されました。
また、船内調理経験は独立して従事した場合に限らず、実習など一定の監督者の指導のもとで1ヶ月以上の乗船教育(OJT)を受けた場合にも認められることになり、資格がやや取りやすくなっています。

船舶料理士試験を受ける場合ですが、試験は国土交通大臣の登録試験期間として船舶災害防止協会の主催で行われます。
受験資格は試験日において満20歳以上であることと、上記の3ヶ月以上の船内調理経験または1ヶ月以上の乗船教育を受けたことです。

試験を受験できる定員が決められており、平成24年度は1回の試験で20名でした。
試験は筆記試験と実技試験が行われます。
筆記試験は、食品学や衛生学・衛生法規・栄養学・調理理論などから出題され、基本的に択一式になります。
実技試験は、日本料理・西洋料理・中華料理の3つが課され、試験に先立ち、事前にレシピが提示されるそうです。

そのレシピを試験当日、その場で調理を行い、科目ごとに30分以内で2人前を作りあげなければなりません。
審査は調理技術とスピードのほか、出来栄えや衛生面、態度などを勘案して評価されます。
近年では、財団法人日本船員福利雇用促進センター(SECOJ)により、外国人船員の船舶料理士試験を実施しており、その割合が増えつつあります。

ちなみに平成22年度の試験合格者は、船舶災害防止協会が9名、SECOJが89名でした。
もっともこの数字は、もともとの受験者数の多さの違いにもよるので決して、日本人が不利なわけではありません。
試験は別々の機関によって実施されるため、筆記試験をクリアし、実技で十分な能力を発揮できれば、船舶料理士資格証明書を手に入れることができます。